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空の小箱

 投稿者:まどろむ海月  投稿日:2005年 5月11日(水)19時10分13秒
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  まだ星々の残る

すみれ色の明け方



まどろみの呪文で舞い上がると

空の彼方に小箱がありました

青く透明な小箱



だれが作って忘れたのだろうか

わたしは 訪れてくるだろう

その人を待つことにしました



うたたねの幾朝かが 過ぎて

白いスカートのその人が 現われました

 (わたしは雲の陰に隠れて見ていたのです)

よほど哀しい夢を見たのでしょうか

疲れ 面痩せした その顔は

涙に濡れていました



白くやさしい胸の谷間から 取り出した鍵で

透きとおった小箱を開けると

 (ああなんて綺麗なオルゴールの調べだろう)

中には ちいさな湖水が 広がっていました



時を遡るように 少女の姿までに

小さくなったその人は さらに

小さく ちいさく…

蜉蝣ほどの 美しい

妖精に なったのでした



湖水の上で その人は舞いました

虹色の翅を震わせながら



哀しいその舞は やがて

のびやかに しなやかに 

自由に

そして いつか

安らぎに充ちたものにかわり

終わりました

空はすでに 曙の空でした



妖精は 少女に

少女は 元の女性に

もどりました



微笑みを とりもどしたその人は

気持ちのいい 額の汗をぬぐい

小箱に鍵をかけ 空のその場所に浮かべると

ねむりに落ちていくように 下界に沈んでいきました







それから幾年を経た後の ことでしょうか

私は 街や村 野や山ですれ違う 

普通の 老齢のご婦人の

美しさがわかるようになっていました

殊にその顔が あの哀しく透明な面影を

思い出させるときなどには
 
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